【内容】
1.建築における中間領域
2.都市における中間町域
3.「まちの縁側」という視点
「中間領域」に関しては、街づくりのさまざまな分野で、注目を集めてきました。
以下で、建築、都市、コミュニティの視点からの「中間領域の考え方」を整理します。
1.建築における中間領域
建築分野における中間領域とは、「内部にいながら、外部を感じられる。外部にいながら、内部を感じられる。人と人、人と自然とを円滑に結びつける空間構造」と定義されています。民家の「縁側」がその代表例で、お寺の軒下やカフェテラスなど馴染みが深いスペースです。
現代は、空調設備が発達し、内部空間と外部空間とをはっきりと分けてしまう住宅が増えてしまい、中間領域は減少する傾向にあります。
戸建て住宅において中間領域は、下記の4タイプに整理されます。
①縁側タイプ:屋根・床あり、壁がない構造。
②サンルームタイプ:屋根・床あり、ガラス張りの構造。
③中庭タイプ:屋根・床なし、壁で囲われている構造。
④土間タイプ:屋根あり、床なし、壁で囲われている構造。
それぞれ、アクティビティの幅を広げ、日常生活を豊かにするスペースとして機能します。
2.都市における中間領域
街路などの都市空間における中間領域では、屋内外よりも、プライベートとパブリックとの関係が重視されてきました。
街路空間における中間領域に関する基礎的研究(渡辺、天野、西山:2017年)では、「良いゴチャゴチャと悪いゴチャゴチャ」とを分析・整理しています。
街路空間に、屋内から「情報・モノ・活動」が染み出した状態が、賑わいのある良いゴチャゴチャで、看板などの「情報のみ」が染み出した状態を悪いゴチャゴチャと結論づけています。
都市計画においては、「パブリックへの染み出し」と「プライベートへの入り込み」の程度が大きいほど、街路の賑わいと居心地が向上するとされています。
3.「まちの縁側」という視点
さらに、社会福祉的な街づくりの視点になるかも知れませんが、中部地方や関西地方で広がった「まちの縁側」も注目すべきだと考えます。
元々は建築家の延藤安弘氏が提唱した考え方で、「縁側のように、地域の誰もが気軽に立ち寄れる憩いの場づくり」の活動で、名古屋・長者町や長野市の事例が有名です。
単なる場所ではなく、人が集い、心を通わせ、つながり合う場と定義されて、長野市では市内に5000箇所の「まちの縁側づくり」を推進しています。
「中間領域」に対して、縁側をメタファーにして、コミュニティの拠点にしていこうをいう視点だと考えます。
高層ビルの足元に広がる「公開空地」の活用が、叫ばれて久しいですが、現状は「公」への提供に伴い、「私」の活用放棄につながっているようです。
このように建築、都市、コミュニティなどの視点で、模索される中間領域として、もう一度公開空地のあり方を捉え直す必要があるのではないでしょうか。
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