オンライン授業の定着で学生の提出するレポートの内容が、格段にレベルアップしたと言う教員の評価があります。通学が無くなり時間が有効に使えたり、リラックスした環境で受講できるという要因も考えられますが、オンラインによって授業内容がアーカイブ化され、学生が必要に応じてリピート学習できる状況になった事が大きいという分析があります。一方で教師の方もアーカイブとして記録されるので、いつまでも同じ内容を繰り返す訳にいかず、適宜更新していく必要があり、結果的に講義内容が充実していくようです。
このようにオンライン授業化によって、教師の知力、努力、熱意が可視化されてしまいます。この構図はオンライン公演などのエンタメ分野に酷似しています。コロナ禍でリアル公演ができず、急速に普及したオンライン公演ですが、一言で言えば「弱肉強食」の世界になったと言われます。オンライン公演が残酷なのは、どんなライブも「同じ画面」で見てしまう事にあります。リアルライブであれば100人のライブハウスの演出と、東京ドーム公演の演出とを比べる人はいませんが、オンライン公演では予算の大小に関係なく、スマホやパソコンの画面を通してフラットに並べられ、残酷に比較されてしまう事になります。しかもリアルなライブでは仲間内で楽しむレジャー的な要素も強いのですが、オンライン公演では個人がスマホやパソコンで「純粋に鑑賞する」事が主流になります。オンライン授業においても、教室やキャンパスでの様々な付加要因が剥ぎ取られ、「講義の質」だけが問われることになるのです。
一方でオンライン授業に対応した機器や通信環境、サポート体制を準備できる大学及び学生と、そうでない者とのデジタル格差=教育格差が拡大・定着してしまうかもしれません。
コモディティ化している授業内容は、オンラインを活用し、これまでよりも遥かに安い費用で提供し、キャンパスで過ごす貴重な時間は、専門性の高い選択科目やグループワーク、教員との対話やキャリア指導などに注力していく必要があります。もちろん社交活動や人脈作りやフィールドワークや在外研究の促進も重要です。
オフィスやエンタメと同様に、リアルとオンラインとのハイブリッド授業を前提に大学のリソース再編成が急務になります。
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