【内容】
1.文化系集客施設における「入場料頼り」の限界
2.スポンサード市場の盛り上がり
3.集客施設におけるtoB戦略の必要性
1.文化系集客施設における「入場料頼り」の限界
一般に集客施設における「時間単価は1,000円」といわれます。
映画館の料金は2時間楽しんで2,000円程度という訳です。
シネコンなどは、デジタル化を前提にして、多彩な映画コンテンツを仕入れ、少人数体制で運営することで、収益化を可能にしています。
因みにシネコンの(初期投資を含めた)収益ラインは、1席あたり1日1回転と言われ、1,000席で年間36万人、2,000席で70万人の集客が目安になります。
Zeppなどのライブホールの場合は、スタンディングを前提に、1,000人〜3,000人がすし詰め状態になる公演によって収益化が想定されています。
平均的な博物館は入場料1,500円程度、年間来館者数は7万人で、映画館と同等以下の料金で、1/5〜1/10の集客数になり、継続性のある事業構造とは言えません。
文化施設が集客を図るため、様々なイベントを企画していますが、私には「商店街活性化」のデジャブに映ってしまいます。
あの手この手を企画する事は良いことですが、手作り感が素人っぽさになり、高度なエンタメ体験に、慣れた生活者の関心を集める事は難しく、大した効果もないまま「イベント疲れ」して取りやめになることが多いのではないでしょうか。
シネコンのようなローコスト運営や、ライブホールのようなすし詰め状態での運営が、難しい文化系集客施設では、「入場料頼り」の事業構造を見直す必要があると考えます。
2.スポンサード市場の盛り上がり
スポーツやエンタメなどのライブコンテンツ事業では、「入場料収入」だけではなく、「スポンサー収入」が大きな柱になっています。
スポンサードは、当初はライブコンテンツへの「協賛」の側面が強かったのですが、テレビなどに放映されるようになると、その視聴者に向けた「宣伝効果」を期待して、スポンサードビジネスとして、大きく発展しました。
そしてデジタル技術の進展とともに、より的確な効果測定が可能になり、進化したマーケティング手法として活用されるようになります。
世界のスポンサード市場は、7.3兆円(2018年)と言われ、直近10年間で、約1.5倍、2.5兆円の伸びを示しています。
一方 日本国内に目を向けると、Jリーグのスポンサー収入は、2013年〜2016年の間で400億円〜500億円と25%の伸びに留まっています。
同じ期間に1,200億円〜2,000億円と67%の伸びを見せるプレミアリーグと比較すると、市場規模だけでなく、成長率でも大幅に劣っていることがわかります。
日本はスポンサードに関して、まだまだ「協賛」意識の抜けない未開拓市場と言えます。
3.集客施設におけるtoB戦略の必要性
ミュージアムや劇場などの文化系集客施設は、toC対応の「入場料頼り」の事業構造を見直すべきです。
スポンサードビジネスを含むtoB戦略に向けて柔軟な運営が必要ではないでしょうか。
このような認識を元に、本シリーズでは、スポンサードに協賛意識の抜けない「未開拓」な日本市場を「可能性」と捉えて「集客施設のtoB戦略」を検討していきます。
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