【内容】
1.これまでの振り返り
2.お祭りの構造を再考する
3.お祭りアップデートの方向性
1.これまでの振り返り
①全国に30万あるといわれる日本の「お祭り」は、2016年「山・鉾・屋台行事」,2021年「来訪神:仮面・仮装の神々」として、ユネスコ登録され注目を浴びます。華やかで参加性もあり、インバウンドにも人気な一方で、担い手不足などで、消滅の危機に瀕した祭りが多い状況です。
②お祭りとは、本来「神に感謝すること」 しかし日本の場合、神社やお寺が主催するものだけでなく、季節や暮らし、地域や学校行事など、様々な由縁と形態があります。
③天の岩戸を起源とする「お祭り」は、神仏習合、廃仏毀釈、政教分離など、時の政府の方針に翻弄されながらも、生活に根付き、継承されてきました。
④「お祭り」の魅力は「日常における、非日常体験によるガス抜き」にあり、地域社会やコミュニティを継続させる優れた仕組みとして機能してきました。
⑤「お祭り」の課題として挙げられる様々な「〇〇不足」は、ガス抜きの主体となる「地域社会やコミュニティ」との関係のズレが原因になっています。
2.お祭りの構造を再考する
「お祭り」は、「日常(ケ)」に対して、「非日常(ハレ)」を提供することで、コミュニティ(○縁)を維持する「ガス抜き弁」の役割を果たしてきました。
この役割を果たしていない「お祭り」は、単なるイベントと大差なくなります。
お祭りは、「①コミュニティの質」×「②巻き込む由縁」×「③非日常の演出」で構成されていると考えます。
①「コミュニティの益・不益」:本来の近所付き合いの「地縁」から、高度成長期には終身雇用を中心とした「社縁」になり、成熟社会になり「知縁」或いは「無縁」に移りつつあります。
「お祭り騒ぎ」を許容するコミュニティの母体「〇〇縁」に対する、メリット・デメリットをハッキルさせる必要があります。
②「巻き込む由縁」:氏神や檀家という由縁(口実)は、通用しなくなりつつあります。近年では「子育て」「環境」「ダイバーシティ」など、様々な由縁が掲げられていますが、「〇〇すべき」という締め付け思考では、難しそうです。
「承認欲求」などに軸足を置く方が、共感を得られやすいかもしれません。
③「反・日常の演出」:お祭りは街という日常を舞台にするからこそ、反・日常を実感できて、ガス抜きの意味を持ちます。イベントスペースの箱の中に収めてしまうと、その効果は半減してしまいます。
結局「誰の、誰による、誰のためのお祭りなのか?」が問われているのではないでしょうか?
時代とともに変化する「コミュニティの益・不益」を考え、参画者を「巻き込む仕掛け」と、ガス抜きに有効な「反・日常演出」を想定する必要があります。
3.お祭りアップデートの方向性
「①コミュニティの益・不益」×「②巻き込む由縁」×「③反・日常の演出」で構成される「お祭り」を存続させるために、3条件とも備えている事が望ましいのですが、アップデートの方向性は、それだけではありません。
「お祭り」には、神楽や花火などの鑑賞志向から、阿波踊りやエイサーなどの参加志向まで、様々な形式があります。
これを目的や適正に沿って組み合わせていくことが重要です。
「観光・イベント」と割り切ったお祭り運営も、想定可能ですし、「企業スポンサード」も検討できます。
もちろん「もう一度地域に根付かせる」お祭り運営も可能です。
繰り返しになりますが、「これまでが〇〇だったから」ではなく、「誰の、誰による、誰のためのお祭りなのか?」の見直しが必要なのです。
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