【内容】
スタートアップ支援施設の定義
スタートアップ支援施設の歴史
スタートアップ支援施設のメリット・デメリット
1.スタートアップ支援施設の定義
スタートアップ支援施設は、創業初期段階にある起業家を対象に、事業拡大や成功を支援する目的のもと、通常よりも安価な賃料で事務所スペースを提供したり、事業の立ち上げに関する専門家によるサポートを提供する施設のことです。
スタートアップ企業の成長段階は4つに分けられます。
プレシード・シード期:事業を始めようとしたり、ビジネスプランをまとめていく段階です。従業員規模は3−5人程度で、最低限の人員で事業運営しています。
アーリー期(シリーズA):創業直後で実績などなく、事業を軌道に乗せるまでの時期を指します。従業員規模は5−20人程度で、人材採用や設備投資など成長に向けて資金が必要な時期になります。
ミドル期(シリーズB):事業が軌道に乗り急成長する時期を指します。従業員規模は20人以上になり、更なる収益の安定化に向けて、広報や人事などの人材も必要になってきます。
レイター期:組織が確立され、事業が安定した状態を指します。従業員規模は30人以上になり、上場準備に向けた人材や資金が必要になります。
スタートアップ支援施設は、主に①プレシード・シード期と②アーリー期が中心となりますが、各々のステップに対応した支援の提供が必要になります。
2.スタートアップ支援施設の歴史
ビジネスインキュベーターは、1970年代後半からの米国の経済不振を背景に、シカゴのダウンタウンに開設された「フルトン・キャロルセンター」が先行事例と言われます。(ソフト化経済センター)
この施設の成功後に、雇用創出と地域経済の活性化の有効な手段として各地に広まりました。
日本では、下記の3段階で発展してきました。
第一期(1990年代)
日本では米国の成功事例を研究しながら、1986年に施行された民活法の後押しによって、全国各地に第三セクターによるインキュベーション施設が整備されました。
しかし、支援対象を「ハイテク」業種に絞りすぎ、オーバースペックな設備と創業期の企業にとっては高額な賃料であったこと。さらにソフト面サポートなどが無かったことから、十分に機能したとは言えません。
第二期(2000年代)
1999年に「日本新事業支援機関協議会(日本ビジネス・インキュベーション協会の前身)」が設立され、起業家支援におけるソフト面からの支援機能強化が図られるようになります。
この時期になると、それまでの課題を踏まえて、大学との連携を重視したり、ハイテク業種に限らずSOHO型施設が増え、より身近に起業の準備ができるようになったという特徴があります。
第三期(2010年代)
2010年代になると起業家の属性(子育て期の女性、外国人材など)ごとに細分化された設立事例が増えてきます。
また地方を中心に廃校になった学校をリノベーションして活用する事例も増えてきます。個別の教室をインキュベーションルームとして活用しつつ、共有空間を入居者相互のコミュニケーションや各種イベントの開催の場として活用することで、相互触発作用を生み出しています。
個別企業だけでなく、ビジネスコミュニティという活動も生まれます。
3.スタートアップ支援施設のメリット・デメリット
[メリット]
家賃が安い:スタートアップ支援施設は、一般的なオフィスよりも安価な賃料で事務所を借りられることが多いです。さらに地方自治体が運営する施設の中には、家賃の一部を補助する制度が設けられる場合もあります。
諸室・サービスがパッケージ化:スタートアップ支援施設は、会議室や商談スペースが整備され、事務所に適した家具や電源・通信設備が備わっている場合が多いため、企業に必要な費用を最小限に抑えることが可能です。
事業によっては、工場や研究室を借りられる場合もあります。
支援マネジャーがいる:スタートアップ支援施設には、通常、事業の拡大及び成長に求められる知識・経験を備えた(インキュベーション)マネジャーが常駐しています。
マネジャーは入居者のサポーター・相談相手として、経営ノウハウの提供から、人材の紹介まで、幅広く対応します。
[デメリット]
手続きが煩雑:スタートアップ支援施設は入居の際に、事業計画の提出や補助申請、事前面談・審査など、煩雑な手続き・プロセスが求められ事が多いです。
自由度が少ない:一般の賃貸オフィスとは異なり、空間や設備など事前に提供・設定された仕様から変更する事が難しく、自由度が低いことは覚悟しておく必要があります。
期間限定:スタートアップ支援施設は、「起業支援」が目的のため、利用期間が数年程度に限定されています。
金銭以外の対価を求められる場合がある:施設運営者によっては、入居企業への投資とそのリターンを目的としている場合、ストックオプションの付与や事業が成長した際の投資の確約が求められる場合があるため、契約内容に注意が必要です。
このような前提を踏まえて、都市開発における「スタートアップ支援施設」の事業フレームを検討する必要があります。
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