【内容】
世界の都市総合力ランキング
Liveable Well Being City調査
住みたい街ランキング
センシュアス・シティ調査
先行指標の課題と検討のポイント
エリアクオリアの開発にあたっては、先行する都市評価指標を整理・研究しました。
1.世界の都市総合力ランキング
「世界の都市総合力ランキング」は(一社)森記念財団が2008年から毎年実施・発表している調査で、都市間競争の視点から世界的な規模で実施しています。
東京をニューヨークやロンドンに負けないグローバルな競争力を持った都市にしようという視点は、分かりやすいと思いますし毎年話題になります。
ランキング好きの日本人にとって、東京がパリを抜いて3位に躍進すると自尊心がくすぐられるのも事実です。
ただ東京都全体を対象にするこの評価指標では、地方自治体の努力目標にはなっても、範囲が広すぎるため民間ディベロッパーなどの街づくり関係者にとっては、コミットのしようが無いというのが実感です。
それに加えて都市の競争力として[経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセス]の6分野におけるオープンデータや施設・イベント数などを客観的に評価する視点も、成長社会志向が顕著で日本のような成熟社会の肌感とのズレを感じるという意見もあります。
さらに小項目レベルでは、観光資源として、観光地の充実度・世界遺産への近接性・ナイトライフ充実度などの三要素から評価されるなどの評価適正にばらつきが見られました。
2.Liveable Well Being City調査
(一社)スマートシティ・インスティテュートによる「Liveable Well Being City調査」
はオーストラリア主要都市やシンガポールなどでの都市設計・運営に採用されている「Livability Indicator」を参考に開発されたもので、2020年に日本版が公表されました。
オープンデータによる客観指標(12カテゴリー45KPI )と居住経験者を大層にしたアンケートによる主観指標(8カテゴリー)の両面でスコア化しています。
やはりオープンデータは市町村単位となり、民間の街づくり関係者には範囲が広すぎると考えます。
また都市設計・運営に向けて開発された経緯から、安心・快適・環境を重視する内容で分野に偏りはないのですが、全方位的で平均的な都市整備水準を目指すものになっています。
3.住みたい街ランキング
SUUMOが発表する「住みたい街ランキング」も毎年話題になります。
関東(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城)、関西(大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山)に居住する20〜49歳を対象にした大規模なアンケート調査で、駅を中心にした街を対象にして親しみやすい範囲になっています。
その反面「あなたが今後住んでみたいと思う街(駅)は?」という漠然とした設問に対して上位三箇所を集計しただけの結果のため、街づくり関係者にとっては改善方策が不明確なため、やはりコミットのしようがないと言われます。
4.センシュアス・シティ調査
LIFULL HOME’S総研による2015年のアンケート調査で、その視点とネーミングの斬新さとが相俟って、街づくり関係者の間では注目されました。
人々が豊かに楽しく暮らす都市が魅力的な都市であるという前提の元、人口データ等の客観的な指標でも、満足度等の主観的な指標でもなく、独特の設問アンケートを元に、その都市で得られる「体験」を「センシュアス(官能)度」としてスコア化し、市区町村単位でランキング付けした調査でした。
街のセンシュアス度とその都市に住む人の幸福度には相関関係が見られるとしていましたが、その後の展開はなく惜しまれました。
5.先行指標の課題と検討のポイント
これらの先行調査では、基礎自治体や大都市圏単位の調査データとなり、対象の規模が大きいため、街づくり関係者には活用しづらいと考えられます。
生活圏となる駅・街単位での都市指標には「住みたい街(駅)ランキング」がありますが、実際に住んでいる人の評価ではなくイメージ主体の簡単な設問の調査となっており、参考にしづらいのではないでしょうか。
エリアクオリア指標では生活圏(駅/エリア)単位で詳細な調査を行い、街づくりへの活用が可能な都市評価指標を目指します。
また先行する都市評価指標では人々の都市への「主観的評価」は、アンケートによる「申告調査」に依っています。
自己肯定感の低い日本人独特の謙遜バイアスを考慮すると、「観測調査」によって可視化できる方が望ましいのではないでしょうか。
エリアクオリア指標では都市のハード(環境)やソフト(機会)等の「客観的評価」に加え、人々の共感度や話題度などの「主観的評価」に対して、ビッグデータによる「観測調査」を試みています。
都市に対する主観的・客観的評価の双方を、観測調査によって定量的に把握することで、街づくりへの活用が可能な信頼性の高い指標づくりを目指します。
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