【内容】
受益換算の可視化
健康効果の測定
1.受益換算の可視化
エリアクオリア指標は「街づくりのカルテ」ですが、その経済効果の測定にも活用可能です。
エリマネの活動原資の捻出手法として期待される「地域再生エリアマネジメント負担金制度(日本版BID)」では、対象エリアの関係者から「負担金の徴収」を可能にしています。
ただしそのエリアに対する「受益換算」が義務付けられています。
要するにエリマネ活動によって、対象エリアの来街者数が増え、消費額が増えた分をエビデンスとして示していく必要があるわけです。
ガイドラインでは、主要イベントにおける「頼助者数をカウント」すること及び、「アンケートによる消費額の把握」を元にして受益換算する方策が紹介されています。
この方策では、イベントごとに100万円単位の費用が必要になりますし、カウントやアンケートする場所が限られるため、イベント来場者数や消費単価も限定的な数値になります。
何よりもイベント以外の活動による来街者の増加は漏れてしまいます。
エリアクオリア指標で活用している人流データを活用すれば、年間での来街者数の増加の計測精度が高まりますし、スマホの決済データから消費単価の把握も可能になります。
年間でのイベント開催数や個別イベントでの集客数を集計する従来手法よりも、合理的で説得力があるのではないでしょうか。
別の視点では、対象エリアの口コミデータの総数から広告価値に換算する方策も提案可能です。
2.健康効果の測定
エリアクオリア指標は、「ファンが多い街づくり」を目標にしますので、その効果測定も経済効果が中心となります。
しかし経済効果以外にも、健康効果などの測定・可視化も可能だと考えます。
商業地であれば、来街者数の多さは「売上」などに反映されますが、日常圏での「回遊・交流が多い街」が、すぐに賃料や地価の上昇という形で顕在化するわけではありません。
少なくとも「①日常圏で回遊・交流が多い」→「②住み心地が良いし、街に愛着が持てる」→「③評判になり転入したい人が増えて、転出したい人が少なくなる」→「④競争力が高まり、市場価値が上がる」という複数のステップがありそうです。
そこで社会コストの低減の視点を想定してみます。
子育てや防災、健康に関するコストの低減などが考えられますが、特に研究が進んでいるのが「健康」分野です。
国交省では、「歩いて楽しめるまちづくり」の補足資料として、「まちづくりにおける健康増進効果を把握するための歩行量調査のガイドライン」をまとめており、その中で「医療費抑制効果の見える化(原単位の試算)」を算出しています。
既往の研究・報告を2つに大別し、
特定の集団の経年的な調査から医療費抑制効果を把握:0.045-0.061円/歩/日
特定の疾病の発症リスクの低減効果から医療費抑制効果を把握:0,0015-0.0044
円/歩/日
の結果を一人当たり医療費の経年的な上昇傾向から補足して:0.065-0,072円/歩/日として算出しています。
※1日+1,500歩で年間約3万5千円の医療費抑制効果(一人当たり年間医療費約40万7千円)
ガイドラインでは「これらの原単位を活用して、医療費抑制効果を見える化することも考えられる。」とまとめられています。
エリマネ活動を通じて回遊・交流を促し、一万人の人たちが1日1,500歩増えると、年間3億5千万円の医療費抑制効果があるというわけです。
人流データを活用して、年間歩行数が算出できると、これらの効果測定が可能になります。
※社会コストの低減という意味では、「CO2の排出量削減効果」も想定されますが、ある試算では、医療費抑制効果の1/100 と算定されており、今回の採用は見送ることにしました。
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