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未来 シン・インキュベーション ⑩

【内容】

  1. 企業の求心力

  2. スタートアップの6次産業化

  3. スタートアップ企業の故郷

 

 

1.企業の求心力

小田急電鉄は、コロナ禍を経て、「社内ベンチャーの育成」に力を入れています。

「クライマー制度」という独自の社内ベンチャー制度で、社内からアイディアを募り、さまざまな新規事業開発を試みています。

特徴的なのは、「地域の課題解決」というスタンスで、デジタルを活用して、鉄道とは直接関係のない新規事業を開発している点です。

ごみ収集支援サービスの「Wooms」や、獣害防止サービスの「ハンターバンク」、町内会などのコミュニティ支援サービスの「一丁目一番地」などが、自走しだしています。

まだまだ事業規模としては、小さいですが、「沿線課題の解決が、沿線価値の向上につながる」という「地域価値創造型企業」というビジョンに基づき展開しています。

企業としての求心力を考える時、売り上げの拡大などの「事業力」はもちろん必要ですが、これと並行して、社員のモチベーションなどの「社員力」と、地域社会との共生を通じた「社会力」とが「三位一体」になる必要があると考えます。

鉄道会社に限らず、社員が地域の課題解決を通じて、働き甲斐を実感していくことは、「社員力」と「社会力」の向上につながるのでは無いでしょうか。

小田急電鉄の試みは、日本型スタートアップが街との連携を図るロールモデルになると考えます。

 

2.スタートアップの6次産業化

飲食業界はコロナ禍で大打撃を受け、生き残りに向けて様々な工夫を模索しています。

テイクアウトやデリバリーの充実といった手法もありますが、カフェ・カンパニー代表の楠本修二郎さんが提唱するのは「飲食業の6次産業化」です。

6次産業とは元々は農業活性化のコンセプトで、1次[農業]×2次[加工]×3次[飲食サービス]の掛け合わせによる総合的な体験提供と付加価値づくりを意味します。

単に「美味しい料理を提供する」だけではない総合的な体験提供が必要だということで、例えば屋上には農場、三階には加工場、二階には調理場、そして一階にダイニングといった「食のイノベーションビル」なども提案されていました。

ストーリー価値を語れる「都市型6次産業としての飲食業」が必要だということです。

同様にスタートアップ支援施設でも、単に情報やビジネスアイデアを競うだけではなく、「スタートアップの6次産業化」という視点が有効ではないでしょうか。

創造の源泉を深掘りし、街の肌感、現場の顧客との直接のやり取りを通じて、提供する商品・サービスのチューニングを繰り返す、一気通貫のプロセスが、投資家やパートナー企業に対するエビデンスと説得力になるのだと考えます。

 

3.スタートアップ企業の故郷

以前「我が家や故郷」は一般的な「家や土地」とどう違うのかを議論したことがあります。

その時の結論は「人は成長期の体験が最も印象に残る」ので、「成長期を過ごした家を我が家、土地を故郷、そして国を祖国と感じる」のでは無いかと言うことでした。

一般的に「幼少期の成長」が最も大きいので、そこが故郷になる場合が多いのでは無いでしょうか。

スタートアップ企業が、成長期を過ごす街は、「企業の故郷」として印象に残り、恩義を感じるのでは無いでしょうか。

そして「スタートアップ企業の故郷づくり」の視点は、「寛容な社会化」を推進するインフラになるかもしれません。

学生やアーティストと同様に、スタートアップ企業の特権は「様々なことにトライする事」が許される立場であると考えます。

何かあれば、ディスるばかりでホメなくなった日本社会、やり直せなくなった不寛容な空気感を変えていくキッカケになると思います。

スタートアップ企業を中心に、究め合い褒め合う知的コミュニティが、拡がっていくことが、明るく寛容な未来を作っていくことにつながると確信します。

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