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開発コンセプトづくりの課題と注力点 ベクトル・メイク ⑤

【内容】

  1. 開発構想の進め方の現状

  2. 都市開発の三層構成

  3. どのような界隈を作るのか?

 

 

1.開発構想の進め方の現状

都市開発において、当然ですが「建築のあり方」は極めて重要です。

ですから「③設計コンセプト」の手がかり(設計与件)となる「①開発コンセプト」「②施設コンセプト」を示す必要があるのですが、逆の流れになっているのが現状ではないでしょうか。

開発プロジェクトは「取り敢えずボリュームスタディしてみる」と称して、主要用途を容積率一杯に作った計画からスタートする事が多いのが実情です。

企画・構想段階で繰り返し、このボリュームスタディを目にしている内に、プロジェクトチーム内では、その形状が「所与条件」になってしまいます。

開発コンセプトを明確にしないうちに、何となくにプロジェクトが進み、他の計画の方針と整合しなくなって修正しようとしても、「工程やコストの問題で手遅れだ」と言われ、事後承認的に前進していくことが多いのではないでしょうか?

図面を見ただけではイメージできず、工事で鉄骨が立ち上がってから初めて状況がわかると言う事例も多々あります。

これらは全くの無駄・損失といえます。

 

2.都市開発の三層構成

都市開発において、建築計画は高・中・低の三層構成で検討すべきだと考えます。

  1. 高層部は景観視点:建物の高層部は都市におけるシルエットとして、どのようなスカイラインを形成するのか?鳥瞰的な視点で考える領域です。

ペントハウスで特徴づけたり、頭頂部のライトアップも有効です。

  1. 中層部は機能視点:中層部計画は、オフィスや住宅、ホテルなどの主用途が、機能的、効率的に配置される部分です。

  2. 低層部は界隈視点:街につながる低層部の計画は、地域に何を提供するのかを最も表現する部分といえ、事業者主導で慎重に検討すべき領域です。

 

極論を言えば①高層部②中層部は、建築設計主導でも問題ないとさえ言えますが、企画・構想コンセプトで特に重視すべきなのは、この③低層部のあり方だと考えます。

総合設計制度の活用に伴う公開空地を「なんとなく」確保するだけではダメなのです。

建物低層部は、様々な人たちの活動接点となる場所で、米国ポートランドの都市局では「地上30ft(約10m)以下の世界観が非常に重要」とコメントしています。

そして丸の内などの都心部の再開発で重視される「イノベーティブな環境づくり」の必須要件が、「建物低層部におけるパーソナルな表現と交流」であることが共通認識になっています。

企画・開発コンセプトは単なるお題目ではなく、建物低層部の界隈構想を中心とした設計与件を担うべきだと考えます。

 

3.どのような界隈を作るのか

これまでの都市開発では、オフィスや住宅、ホテルなど主用途部分の、天井高や建築・設備スペックが競われてきました。

しかしオンライン1st時代になり、わざわざ出社する価値のある会社や来街価値のある施設は、都心ならではのリアルな刺激・体験を、どのように提供できるかが、大きな価値・評価になるのではないでしょうか。

低層部の界隈構想は3つのレイヤーで検討すべきだと考えます。

第1レイヤー「アクティビティ」:低層部にまず求められるのは 「クリエイティブの誘発」だと想定します。そのためには、どんな人たちが、どんな活動をしている状況が望ましいのか?を想定する必要があります。

第2レイヤー「施設・サービス」:次にそのアクティビティを促すためには、どのような商業や施設・サービスが提供される必要があるのか?を想定します。

第3レイヤー「界隈環境」:想定アクティビティを促し、想定する施設・サービスを提供するための建築・環境の配置や断面形状が対応します。

その場所では、

「不特定多数の人を集めるイベント広場的な利用が求められるのか?」

あるいは

「建物ユーザーを中心としたコミュニティ醸成の場として利用されるのか?」

など、事業主体が企画・構想コンセプトとして設定した方向性に基づいて、利用対象と利用目的に対応した界隈構想を、設計与件として建築設計者に手渡す必要があります。

街は活動舞台であり、経営資源として重要視される時代には、低層部の界隈構想が非常に重要になるのです。

コロナ禍を踏まえたリアル都市の価値を高めるために、対象や目的に合わせた界隈構想を中心とした開発コンセプトを、設計与件として提示すべきではないでしょうか。

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